JATA経営フォーラム2020 開催報告
『既存事業深化とイノベーション
「両利きの経営」を目指して』
JATA経営フォーラム
2020 開催報告 :
 分科会詳細

更新日:2022年03月26日


2020年2月21日開催

JATA経営フォーラム2020 開催報告 : 分科会詳細

分科会 A 分科会 B 分科会 C 分科会 D

分科会 A

テーマ : 海外旅行2000万人時代を迎え、次なる時代の旅行商品とは!

モデレーター :
遠藤 修一氏  株式会社JTB  執行役員 個人事業本部 海外仕入商品事業部長

パネリスト :
浅田 康夫氏  ANAセールス株式会社 取締役 旅行事業本部長
萬年 良子氏  ベルトラ株式会社 取締役 海外旅行事業部執行役員
吉岡 敬泰氏  クラブツーリズム株式会社 取締役 テーマ旅行本部長

モデレーターを務めた遠藤氏は、海外旅行を取り巻く環境の変化として、今年から国内募集型企画旅行で個人包括旅行運賃(新IIT運賃)が導入されるなど、いわゆる「ダイナミックプライス(変動型料金)の拡大」を指摘。旅行会社が直面する課題として、(1)価格固定型の商品やパンフレットによる流通手法からの転換、(2)航空会社やホテルなどサプライヤーとのシステム連携、(3)差別化コンテンツの開発という3つを挙げています。

これを受けて、吉岡氏はIT・AIの発達により、在庫管理の最適化や需要予測に基づいたダイナミックプライシング、 交通情報に基づいた最適な旅程作成といった旅行会社側の業務効率化がもたらされる一方、圧倒的な観光情報の収集や最安値での購入、 外国人とのコミュニケーション改善など、顧客にも利便性の向上という大きなメリットをもたらしていることに言及。その上で、 「新しい旅の目的やスタイルの提案、知識と経験に基づくコンサルティング、新しい旅コンテンツの創造といった『人』にしか担えない領域にこそ、旅行会社の存在意義があるはず」と指摘しました。

吉岡氏は「顧客が体験してみたいと思う旅の提案」と「実際の旅での感動体験」を重ね合わせることで、「旅を通じた顧客への『体験価値』の提供」が実現されると説明。顧客の体験したいことは多種多様であり、その対象と目的を明確にし、旅行の目的に顧客の趣味趣向に合わせたテーマを設定することが「人が担う旅行企画の仕事」と強調しています。

萬年氏は、旅行が単なる「体験」にとどまらず、その先の「SDGs」を実現するものとして志向されるようになってきている世界的なトレンドを指摘。「次世代のためにサステイナブルな旅行手段を選ぶ必要がある」「旅行中は現地の文化を代表するような本格的な体験をしたい」「旅行中に使ったお金を現地コミュニティに還元してほしい」といった意識が旅行者間で強まっており、「旅を彩るツアーガイド」としての“Colorier(コロリエ)”の重要性が増していることを強調しました。

また、ベルトラのSDGsに関わる取り組みとして、萬年氏は「安全性の最大化と継続性の向上」を目的とする 「VELTRAダイビングプロジェクト」の2018年からの取り組みを説明。20カ国で展開する275商品について、「純酸素の装備」や「AEDの普及・サポート」をといった独自の安全基準を設け、 ダイビング人口の増加を図っていることを紹介しました。

浅田氏は、個人型旅行の領域が「レッドオーシャン」化しているという認識を示した上で、「少子高齢化や人口減の日本マーケットで、なぜ旅行業界が『異業種』や『海外OTA』による参入を許しているのかについて、消費者の旅のスタイルが「包括旅行運賃を利用した旅行会社によるパッケージ商品に参加する」という形から 「顧客自らが自分の信頼するサイトで、自分好みの旅を組み立てる手配型」へシフトしていると同時に、「自己責任文化が高まると手配型を志向する」と分析。そうした個人手配型の旅行が、予約する際に最適な価格を提供する「ダイナミックプライシング」との親和性が高いことにも言及しました。

その一方で、20代の価値観が「失敗したくない症候群」や「幹事はイヤ」といった傾向を強め、旅行においては「店頭への回帰」も見られるようになって いることから、旅のプロからの提案を求める余地が広がっていることも指摘しています。浅田氏は、「『商品』だけでなく、適切で快適な『コミュニケーション』が重要」であり、 「100人に対して100個の商品は不要だが、100通りのコミュニケーションが必要」と説明。「顧客一人ひとりの人生に寄り添い、どれだけ『かけがえのない存在』となりうるか」と問い、 「Life Time Value(生涯顧客価値)の向上を目指して」旅行会社としての存在意義を高めて行ければ、と呼びかけました。

最後にモデレーターを務めた遠藤氏は、パッケージ商品が次なる時代を迎えるにあたり、 「社会課題に対し、パッケージ商品がどのようなソリューションを提供できるか」、「旅行業界として切磋琢磨しながらも、いかに協業していくか」、そして「ダイナミックプライシング等の 厳しい環境変化にどう対応していくか」の課題提起と共に分科会を締めくくりました。

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分科会 B

テーマ : デジタルネイティブ時代の新たな旅行会社のカタチ

座  長 :
大槻 厚氏  株式会社日本旅行  取締役常務執行役員 個人旅行統括本部長

プレゼンテーター :
伊藤 かおる氏  KNT-CTホールディングス株式会社  国内旅行部 課長
加藤  大祐氏  株式会社JTB  個人事業本部 事業統括部 MD戦略担当マネージャー
西     剛氏    株式会社びゅうトラベルサービス  営業戦略部 部長
宮口  直人氏  株式会社JTB総合研究所  客員研究員

顧客層の変化や競合相手の多様化、テクノロジー環境が大きく変わる中、旅行業者の新たな役割がどのようなものになるべきかを多面的な視点から分析・議論し、将来の旅行業界のあり方を研究することを目的にJATAは「国内旅行マーケットにおける新たな役割研究会」を立ち上げ、研究・議論を重ねてきました。

大槻氏は、旅行業界として問題意識を共有するため、(1) 日本人国内旅行市場規模の拡大とは裏腹に旅行業者の取扱額が減少していること、 (2) グーグル・アマゾンといったグローバルプラットフォーマーが旅行業界に参入する動きを加速させていること、 (3) デジタル環境の進展を受けて、顧客がデジタルツールを活用した購買の意思決定を行っていること、(4) 個人包括旅行運賃(新IIT運賃)の導入により、 パンフレット主体の店頭販売に大きな変化が生じる可能性があることなどを指摘しています。

2030年を見据えて旅行業界を取り巻く環境について説明した宮口氏は、人口減少と高齢化が進んでいる日本でシニア世代の動向の重要性が一層高まる一方、ミレニアル世代(2030年頃の30~50歳)が消費動向の中心となり、新たな主流を形成すると予測。
また、テクノロジーの進化は今後も加速を続け、旅行業を取り巻く社会環境や経済環境も大きく変化すると予想され、AIやロボット、自動運転、VR/ARなどの技術革新により、旅行の相談や申し込み、旅行サービスの提供にも大きな変化がもたらされる可能性に言及しました。
さらに、業界構造も発地主義から着地主義への移行が加速し、DMOによる新たなツーリズム市場の創造、あるいは旅ナカにおけるDMOの存在感の増大などにより、DMOとの連携が不可欠になると予想しています。

「OTAの動向を踏まえた旅行会社の役割」について報告した加藤氏は、 (1) 顧客目線を失って作り手の論理が優先されている、(2) 便利なはずのパッケージツアーが複雑化している、 (3) 募集型企画旅行における企画性が薄れている、(4) 募集型企画旅行とダイナミックパッケージの差がなくなってきている、 などの課題を指摘。研究会での議論を通じて得られた気づき・キーワードとして、(1) 顧客に「寄り添う」ビジネスへのマインドチェンジ、 (2) 「エージェント」から「アドバイザー」への変革、(3) 旅行会社の持つ「企画力」の強化、(4) インターネットでは得られない「独自の専門性」などを挙げています。

「宿泊施設の動向を踏まえた旅行会社の役割」を説明した西氏は、宿泊施設が求める旅行会社の役割として、(1) 宿泊施設が持つ「魅力」を伝える「発信力」と「商品構築力」、(2) 宿泊施設がリーチできない顧客層の開発、(3) 宿泊施設との真のWIN&WINの緊張感ある関係構築、を指摘。「旅行会社が“売ってあげている”時代から、宿泊施設に旅行会社が“選ばれる”時代」に変化していることを認識し、「これからの旅行会社は、宿泊施設をはじめ地域のあらゆるステークホルダーに選ばれるように自社の強みを生かすべき」と訴えました。

「DMOの動向を踏まえた旅行会社の役割」について報告した伊藤氏は、地域・DMOの課題として、(1) 地域の観光資源を磨き上げ、持続可能な地域をつくること、(2) 観光で他産業の課題を解決する考え方、(3) 観光客の満足度だけでなく「再来訪」意向を意識し、顧客にとって特別な存在になること、などが大切という認識を示しています。その上で、地域・DMOにおける旅行会社の役割として、(1) DMOなどと共に地域のファンを作っていく姿勢、(2) ゼロからデスティネーションを開発していく取り組み、(3) 造成・販売が一体となって地域と共に商品を作ること、などの重要性を強調しました。

大槻氏は、プレゼンテーター各氏による報告や説明を踏まえて、これからの旅行会社の役割として、(1) 旅行会社の店舗を「ブランドコミュニケーション」の場とすること、(2) 旅行会社のスタッフを「トラベルアドバイザー」に変えていくこと、(3) 旅行会社の機能的役割を「インテグレーション」機能に高めていくこと、(4) 旅行会社の経営層の意識改革を図ること、を提言しています。

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分科会 C

テーマ : 今や成長領域!最新事例から学ぶユニバーサルツーリズム

モデレーター :
渕山 知弘氏  KNT-CTホールディングス株式会社
グループ事業推進本部地域交流部 課長
(JATAユニバーサルツーリズム推進部会 部会長)

パネリスト :
小島 永士氏  全日本空輸株式会社  CEマネジメント室 CS推進部 担当部長
篠塚 恭一氏  株式会社SPI あ・える倶楽部  代表取締役
関    裕之氏  株式会社JTB 個人事業本部 事業統括部
全社ユニバーサルツーリズム推進担当マネージャー

モデレーターの渕山氏が「すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり、高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指す」というユニバーサルツーリズムの概念を紹介、対象には乳幼児連れや妊婦、訪日外国人なども含まれると指摘しました。

そのうえでユニバーサルツーリズムの市場性についても説明。「すでに高齢者や障がいがある者の割合は人口の約3分の1を占め、そこに大きな市場が存在する。また70代に入ると健康上の理由で旅から離れてしまう高齢者が約3割を占め、もしも70歳以上の高齢者が60代と同じ回数の旅行をしたと仮定した場合の市場拡大効果は2014年ベースで5200億円もあったとの試算が国から発表されている」としました。さらに、1998年には全体の16.2%の2051万人だった65歳以上人口が、2020年には3600万人を超えるまでに増えており、今後も増え続けていく状況が紹介されました。

関氏は2012年のJTB創業100周年を機に、JTBグループが 「Tourism for All」の実現に向けてユニバーサルツーリズムの取り組みをスタートしたことを紹介。具体的には、従来のバリアフリー旅行専用商品ではなく、 国内旅行商品「エースJTB」、海外旅行商品「ルックJTB」をベースとしたサービスの提供を目指すことで、お客様の選択肢の幅を拡げていると説明しました。 また社内の取り組みとして、全社員に「ユニバーサルツーリズム・ガイドブック」を配布して、様々な障がいの特性と基本的な対応について理解を図るとともに、障害者差別解消法と心のバリアフリーの理解促進を目的としたeラーニングを実施していること。また、お客様の障がいの状況や必要な配慮、要望を正確に把握して社内で共有できるヒアリングシステムを導入していることや、社内に相談窓口を設置して、販売サポートや情報整備、事例共有を図かり、サービス向上を図っていることなどを報告しました。

小島氏によると、全日空の国内・国際合わせた年間利用客約5800万人のうち、障害などで手伝いを希望した旅客は約18万5000人で比率にして0.32%です。国民に占める障害者の比率が6.7%であることや、スターアライアンス加盟の海外航空会社における比率が概ね1%~1.5%であることを考えると「まだ日本の空は、障がいをお持ちの方々にとって遠い存在であると言わざるを得ません」という見解を示しました。

東京五輪のオフィシャルエアラインでもある全日空としては、ユニバーサルサービス推進を経営課題として認識し、約50億円を投じて課題解決に当たっています。具体的には、ハード面とソフト面の両面からの改革を推進しており、ハード面では高齢者や車椅子利用者に優しい設備への投資。たとえば空港においては座ったままで手続きできたり、車椅子やベビーカーでもストレスなく通過できるようにゲートの幅を広げた改札機の設置などを進めています。またソフト面では「実際に高齢者や障がいのある方との交流の場をオープンセミナーの形で設けたり、昇格・昇給の条件にこうしたセミナーの受講を組み込んだりすることで社員の意識改革に取り組んでいる」ところです。

介護旅行サービス事業を行うSPIあ・える倶楽部の篠塚氏は、「旅行需要が右肩上がりの時代は需要があり続けるとの前提でものを考えてきたが、これからは介護などが必要になる高齢者をいかにして生涯顧客にしていくかが問われている」との問題意識を提示。そうした背景もあって旅行と介護の両方の知識とスキルを兼ね備えたトラベルヘルパーの人材派遣や人材育成に力を注いでいることを説明しました。

篠塚氏が2006年に設立したNPOトラベルヘルパー協会では人材育成活動としてトラベルヘルパー養成に取り組んでおり、2019年までに1179人が受講し835人の修了者を送り出しています。また、トラベルヘルパーは単に介護者として顧客の立場を代弁するだけでも、旅行のスケジュールを守るだけの旅程管理者でも務まらず、「輸送や宿泊の提供者側が100%の対応ができないことも想定し、宿泊施設における安全性の確保や輸送機関の定時運行にも目配りしながら、旅行者とサービス提供者の間を取り持つ通訳として機能する必要がある」と解説。さらに「医療介護の必要な方々が旅行できる受け皿ができれば、旅行に行きたい人はまだまだ沢山いる」とユニバーサルツーリズムの大きな可能性を指摘しました。

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分科会 D

テーマ : 知らぬは損!?   事業力&収益力と従業員満足度を高める
            旅行事業者のためのテレワーク導入・活用ポイント解説セミナー

講  師 :
湯田 健一郎氏  株式会社パソナ  営業統括本部 リンクワークスタイル推進統括/
                     東京テレワーク推進センター  事業責任者

事例紹介 :
宮野 浩臣氏  株式会社ジャルパック  総務部 人事総務グループ マネージャー

パソナの湯田氏によると、“tele=離れたところ”と“work=働く”を合わせた造語である「テレワーク」とは、「ICTを活用した時間や場所にとらわれない働き方」のことで、自宅にいながら会社と連絡を取り合い仕事を行う「在宅勤務」、移動中や客先で仕事を行う「モバイルワーク」、配属先以外のオフィススペースで仕事を行う「サテ

ライトオフィス勤務」の3種類があります。

テレワークの主な用途・目的としては、事業の視点からは「売上・利益の向上」「顧客満足度の向上」といった会社が取り組む事業に対する効果、組織の視点からは「チームの生産性の

向上」「事業継続性の向上」など自部署・チームに対する効果、個人の視点からは「ワークライフバランスの向上」「ライフステージとの両立」といった各社員個人に対する効果などが期待されています。

都内にある従業員数が30人以上の企業2000社以上が回答した東京都のアンケートによると、2019年におけるテレワーク導入企業は25.1%で、2020年度には35.0%まで引き上げることが都の目標になっています。また、同じアンケートでは、企業におけるテレワーク導入の目的として「定型型業務の生産性の向上」が50.5%で過半を占め、「従業員の通勤時間、勤務中の移動時間の削減」(45.5%)、「育児中の従業員への対応」(39.2%)、「介護中の従業員への対応」(33.1%)が続きました。

湯田氏は、人材採用におけるテレワーク導入のメリットとして、契約の継続性が高まること、新規募集条件が改善されること、 ハイスキルの募集が可能となることなどに加え、グローバル対応やスポット勤務対応なども併せて指摘しています。

また、湯田氏は環境・セキュリティ面におけるテレワーク導入のポイントとして、セキュリティガイドラインや個人情報保護法など「ルールによるセキュリティ対策」、アクセスの管理・制限や暗号化による管理など「技術的なセキュリティ対策」、施錠管理や覗き見防止など「物理的なセキュリティ対策」を挙げ、「『セキュリティガイドライン』『セキュリティポリシー』『個人情報保護対策』など基本方針を決めつつ、より実践的なテレワーク時の運用ルールも策定する」ことの重要性を強調しました。

テレワークの事例紹介を行ったジャルパックの宮野氏は、2015年から着手した「働き方改革」について、「クリエイティブかつイノベーティブな生産活動による高収益体質への変革」と「仕事場以外での学び・生活者としての気付きによる個人の成長」を目指していることを紹介。 最初に行った制度改革では、2017年上期に在宅勤務を制度化すると同時に、仕事場所を自宅に限らないテレワークやワーケーションも実施しました。

2018年から1年かけて試験的に導入したフレックスタイムも、昨年10月から本格導入されており、「現在は全社員の73%がコアタイムのないスーパーフレックスで勤務」しています。また、サテライトオフィス提供ベンダーとも契約し、首都圏に展開されている約70店舗を全社員が利用できる環境を整備し、社外での隙間時間の有効活用を実現しています。

さらに、「最も重要なのが社員の意識改革」と強調する宮野氏によると、セミナーやワークショップの実施に加えて、社内報を活用した情報発信も積極的に展開した結果、2019年度の上期には月間平均190人程度がテレワークを行い、1カ月1人当たり2.6回を数えました。

宮野氏は、「在宅勤務の制限回数増加やオフィスでのフリーアドレス導入といった環境整備も社員の行動を変える効果があった」と指摘。「新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、在宅勤務の回数制限を撤廃し、業務に支障がない限り、在宅勤務を行うよう指示している」ことにも言及し、「もともと東京五輪を意識して進めてきたテレワークの環境整備が、不測の事態においても業務継続が可能である、危機管理上の効果を体感している」と説明しています。