女性の働き方改革 ロールモデルやキャリアパスの紹介
第4回 : 小谷野 依久さん/(株)JTB

更新日:2022年08月19日


2020年2月10日

4回 : 小谷野 依久/(株)JTBさん
~ 多様な人財を活かす ~ 「聴覚障がい」を切り口に、職場の風土改革への挑戦

プロフィール

名前 : ・小谷野 依久

勤続年数 : 1998年 株式会社ジェイティービー入社  立川支店(業務課配属)

現在の業務 : 株式会社JTB 虎ノ門第五事業部

※2019年4月、再編により(株)JTBに名称変更となりました。

プロフィール・職歴

西暦 職歴
1998年 株式会社ジェイティービー入社  立川支店(業務課配属)
2006年 再編による分社化  株式会社JTBコーポレートセールス/立川支店
2014年 異動  霞が関支店(業務部配属)
2017年 霞が関第五事業部(業務課配属)
2018年 再編による経営統合  株式会社JTB/虎ノ門第五事業部

現在の個所における取組内容について

JTBグループ一丸となって進めている「カルチャー改革」の推進にあたり、全国172の個所に、 その牽引役である「Smile委員長」が任命されています。現個所長より、その役割の任命を受け、ボトムアップでの推進に向けて日々取り組んでおりますが、中でも自身の得意とする、誰もが働きやすい風土の醸成に向けてダイバーシティの改革に力を注いでいます。

具体的には、以下に記載の取組を実施してきました。

  • 聴覚障害社員向けの『「企画」を学ぶ』セミナーを開催
  • 情報保障面の改善
  • 社内で自立するための手段を増やすこと
  • 音声がなくてもスムーズに仕事が進む環境推進
  • わかりやすい視覚優位のマニュアル作り
  • 社内での障がい理解の推進

自身も聴覚障がい者であることから、働く聴覚障がい者の活躍推進と環境改善について、積極的に働き かけをおこなっています。また、多様な社会において、ユニバーサルな環境とはどういうことかについても常に考え、実現することを意識して、個所における取組を推進しています。

自身が感じた職場風土の課題認識

私は幼少期に聴覚障がい者となり、補聴器を活用して育ちました。学生時代は障がいを意識することはあまりなかったのですが、就労後においては、当時の業務のあり方などに困難を感じることが多くなりました。例えば、社内での問合せ対応ですが、当時は電話のみの時代でしたから、問題を簡潔にまとめて書き出し、誰かの手が空いた瞬間を探し代わりに電話をしてもらう、そんな対応を繰り返していました。人に頼んで、伝え聞き、教えて貰うことは、問題を解決した達成感や自信に繋がっていくこともなく、ひたすらストレスに感じておりました。
4年前、端末操作の研修に参加した際に、それまでの疑問を箇条書きにして、持参することにしました。講師は驚きながらも「そういえば、ヘルプデスクは電話のみで、メールがありませんね。」と話し、すべての疑問に丁寧に答えてくれました。その半年後に、問合せ用のメールアドレスができたことを今でも覚えています。
メールで問合せができるのは今では普通のことですが、私が入社してから何10年もの間、「ヘルプデスクへの質問は、電話で行う」が当たり前でした。聴覚障がい者にとって、電話をすることは非常に難しい行動です。今思えば、「電話で聞く以外の方法はないのか」と疑問を持ち、行動に移したことが組織の在り方を「変える」ことに繋がっていったのだと思います。

今の活動の原点

JTBでは、障害のある社員をチャレンジドと呼び、年に1度、若手チャレンジドが集まる「チャレンジドサミット」という大きな研修が開催され、全国各地で働くチャレンジドたちと交流を図ることができます。そこでは、各々のコミュニケーション上での悩みや職場での工夫などを耳にします。

例えば、若い聴覚障がいを持つ社員からは、「もっとみんなと話したい」「雑談に入りたい」などの思 いや、視覚障がい社員からも、「おはよう」という声が聞こえても、自分に言ったのか他の人に言った のかがわからなくて返事ができず挨拶ができないでいる、などの話も耳にしました。こういった普段の 職場で話すことができない本音を、聞くことがあります。ある年のチャレンジドサミットで、そんな若 い人達の悩みが昔の自分と重なり、私は20年近くJTBにいたのに、今まで何をしてきたのかと心が痛みました。

ちょうどその頃、職場で週に1回、交代制で3分間スピーチをおこなっていました。最後に余った1回で、再度私がスピーチを担当することになり、私は自分の障がいについて話してみようと決意しました。世の中の音がどのように聞こえているのか、朝起きる為に目覚し時計はどんなものを使って いるのか、キッチンタイマーはどうしているのか、テレビドラマは楽しめているのか、口を読むコツなど、そういう話をしたと思います。それまで、自分から障害の話をすることがほとんどなかったため、勇気が必要でしたが、同僚たちの反応はとても暖かく、安心感で満たされたのを覚えています。この ことが、これまでの活動の最初の一歩だったと思います。

次のステップとして、上司にお願いしてアンケートをとりました。「聴覚障がいのことをどう思っているのか」という内容です。集計内容を見るのが怖かったので、心境を察した上司がアンケートを集約 してくれました。また、何人かの聴覚障がい社員にも、困っていることをヒアリングしてみました。 それをもとに、当時の人事担当者に、「聴覚障がいについて理解をしてほしい」とプレゼンテーション をおこなう機会をお願いしたのです。私にとって、とても覚悟がいりました。もしかしたら、理解を求 めることはわがままで、「自分の権利ばかり主張する」「聴覚障がいばかり特別扱いはできない」と思わ れてしまうのではないかと恐れていたからです。

人事担当者は真剣に話を聞いてくれました。そうしたことがきっかけとなり、音声認識を活用した 「UDトーク」が導入されました。私はその時、初めてプレゼンをおこない、パワーポイントで資料を 作ったのですが、スライド資料としては文字が多すぎるものでした。そのときの経験をもとに「視覚で 得られる納得感やわかりやすさ」を考えるようになり、それが今日の後輩指導にも役立っています。

今後、挑戦してみたいこと

「旅行業界の手話用語を制定し、社内用語として活用すること」

私は幼少期に失聴したので、聴覚障がいがあっても話すことができます。今でこそ手話で会話をしま  すが、実は5年前に都内の部署に異動になったことを機会に、手話の必要性を感じて独学で覚えまし た。手話を覚えたら、聞こえていなかった会話が見えるようになりました。そして、手話を通じて年齢 を超えて仲間意識を持つことができる世界を知りました。
2年前のこと、社内の手話で繋がる仲間たちと、経営理念の手話表現を作りました。経営理念の英語やスペイン語バージョンのように、手話も作ろ うという企画でした。手話には音声日本語に合わせて発する「日本語対応手話」と、日本語とは別の言 語となる「日本手話」の2つがあります。手話だけ考えるのであれば、日本手話の表現だけを考えれば いいのですが、やはり私たちは聞こえる人たちと分かれることなく、皆と一緒に唱和することに価値を 感じ、経営理念を読みあげながら手話ができる「日本語対応手話バージョン」と、声を使わずにろう者 が経営理念を唱和するための「日本手話バージョン」の2つを作りました。実はこれ、手話学習をして いる人にとっては驚異的な発想なのです。しかし、まだ社内でしか公開しておらず、外部にむけて発信できるように調整中です。

こうした活動の1つ1つに思いを込めて、丁寧に対応をしていき、ダイバーシティの原点である、 どんな人も働きやすい環境づくりに向けて、今後も挑戦していきたいと考えています。